安積疏水は、1879年(明治12年)10月27日に開成山大神宮(郡山市)の社前において「猪苗代湖疏鑿起業式」が挙行され、その翌日から順次工事が開始されました。1881年(明治14年)7月31日山潟水門(やまがたすいもん/猪苗代町)が落成し、1882年(明治15年)8月には幹線水路52Km,分水路78Km,3郡(安積・安達・岩瀬)への灌漑が実現しました。
起工式から3年の月日と、85万人を動員した大規模国家プロジョクトにより、猪苗代湖の水が流れる様を見た喜びは、実に感慨深いものであったと考えられます。
その後、山潟水門には湖面低下に伴い、揚水機場が東京電力の補償工事によって建設され、1941年(昭和16年)運転を開始しました。
戦後、食糧増産の政策を目的とした1,500ha開田のための新安積疏水は、安積疏水からの分水方式に計画変更されました。そのため、安定した用水供給・維持管理を総合的に判断し、老朽化が激しい山潟水路から志田浜地区内に新取水口(上戸頭首工:じょうことうしゅこう)が新設され、取水後すべてトンネルで通水されました。
※「猪苗代湖(いなわしろこ)」は2016年(平成28年)4月19日(火)、文化庁により開催された「日本遺産審査委員会」の審議を経て、「日本遺産」に認定された37の構成文化財の一つです。(撮影:12/2/2007)
↑防波堤の役目をする小坂山の岩場に建設された上戸頭首工。三角形の取水口。
↑建設当時の上戸頭首工は戸ノ口の水門(十六橋水門)に似せ、16の門扉からなっていたそうです。半径約48m、中心角約47度、孤長39.5m。
↑「安積疏水上戸頭首工」入口表示。
↑水利使用標識。
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↑49号線の北側にある建物手前に開いた穴から流れが見える。
↑この敷地の下を手前に流れて郡山へ向かう。(しばらくお別れです)
↑山潟取水口の跡地。湖面に接する護岸が見える。水門も撤去され、埋め立てられている。
↑安積疏水の歴史を刻んだ護岸。(波を受け、ただ風化していくだけなのか~)
↑山潟揚水場電動機(350馬力)。当時4台あったうちの1つのポンプが保存されている。(幾ら何でも野ざらしはないでしょう!私は涙が出そうになりました)
↑揚水場管理事務所跡。レストランに改装されたが、今は休業中。
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↑郡山市開成の安積疏水を管理する「安積疏水土地改良区」敷地内には残り2台ポンプが展示されている。写真は敷地入口右にあるのは猪苗代にあるのと同じ350馬力。
↑1941年(昭和16年)から1963年(昭和37年)までの20年間において設置されていたようです。
↑1941年(昭和16年)日立製作所製。「三相誘導電動機」とある。
↑残り1台は敷地西側駐車場にある。150馬力。
↑こちらは1940年(昭和15年)日立製作所製。「三相誘導電動機」とある。
↑現在も安積疏水を管理している「安積疏水土地改良区」。
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↑当時の安積疏水は埋め立てられている。奥が中山峠方面(そう言えば、水がたまって湿地状態になっていた頃を覚えています)
↑沼上発電所(ぬまがみはつでんしょ)は、安積疏水が沼上山の中腹にあった沼上隧から下の五百川へ流れ落ちる落差(当時33.33m)に着目した郡山絹糸紡績会社が、1896年(明治29年)に水利使用の許可を受け、1898年(明治31年)建設に着工。翌年運転開始した。郡山市熱海町安子島
※「沼上発電所(ぬまがみはつでんしょ)」は2016年(平成28年)4月19日(火)、文化庁により開催された「日本遺産審査委員会」の審議を経て、「日本遺産」に認定された37の構成文化財の一つです。
↑当時、沼上発電所で発電された電力(300KW)は、高圧長距離送電技術により22.5km離れた郡山市まで送電され、紡績会社や化学工場に利用された。郡山市の急速な発展にもたらした功績は大きい。左上は旧中山峠。(冬は雪が多く、かなりの難所でした)
2009年(平成21年)2月6日、経済産業省は日本の近代化に貢献した歴史的な建物として沼上発電所を「近代化産業遺産」に認定しました。
↑下流にある竹之内発電所への取水口。
↑水利使用標識。
↑磐越西線の下をくぐるトンネルはレンガ造り。
↑その先の国道49号線の先はトンネルとなり竹之内発電所へ向かう。
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↑沼上発電所横の磐越西線。陸橋下は五百川が通る。
↑五百川本流。川下の磐梯熱海方面へ流れていきます。
↑1919年(大正8年)に造られた竹之内発電所(たけのうちはつでんしょ)。
2009年(平成21年)2月6日、経済産業省は日本の近代化に貢献した歴史的な建物として竹之内発電所も「近代化産業遺産」に認定しました。郡山市熱海町安子島字竹ノ内
※「竹之内発電所(たけのうちはつでんしょ)」は2016年(平成28年)4月19日(火)、文化庁により開催された「日本遺産審査委員会」の審議を経て、「日本遺産」に認定された37の構成文化財の一つです。
↑左の真新しい管の右上には、古い2本の管が見える。
↑フェンスの蓋をした用水が流れてくる。
↑川下にある丸守発電所への取水口。
↑発電所に隣接する変電設備。
↑水利利用標識。
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↑取水口からもくもくと流れる。
↑竹之内発電所の南手から斜面を用水が通っている。
↑S字で用水流れていく。奥が磐梯熱海方面。
↑隧道になり丸守発電所へ向かいます。下は五百川へ合流する手前の日沢川。
↑隧道側から竹之内発電所方向を望む。
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《参考文献》
◇「安積疏水百年史」 発行:安積疏水土地改良区
◇「郡山市水道史」 発行:郡山市水道局
◇「誰にでもわかる安積開拓の話」 発行:歴史春秋社
◇「みずのみち 安積疏水と郡山の発展」 発行:歴史春秋社
◇「郡山市水道90年のあゆみ」 発行:郡山市水道局
◇「安積開拓120年記念 先人の夢に逢う」 発行:郡山市 ほか